職業1 働き方のゆくえ

自動車会社への他業種の参入が話題になっています。排ガス規制を背景にした電気自動車インターフェイス、カーコンピューティング。あらゆるモノがインターネットでつながっていく将来への可能性を開く一産業の話題です。

こうした参入は、IT系人材の自動車会社への引き抜きをもたらし、独立心が旺盛なエンジニアは、その専門性を発揮できる場所へと流出しているといいます。

職業の専門化は個人の働き方をどう変化させていくのでしょうか。また、働き方の変化は、自動車関連産業や専門家のみならず、わたしたちの周りにもすでに生じつつあるように思いますが、今後、どう展開していくのでしょうか。

ダニエル・ピンクは「フリーエージェント社会の到来」の中で、オーガニゼーション・マンの終焉と、フリーエージェントの到来について論じています。ピンクによると、フリーエージェントとは、インターネットを使って、自宅で一人で働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた人々のことで、フリーランス、臨時社員、ミニ起業家に分類されるそうです。

背景には米国の心理学者マスローの、自己実現の欲求をベースとした仕事や家庭生活の構想は、組織では不可能だが、フリーエージェントとして生きることで可能となるという考え方があります。自己実現ワークライフバランスがベースになっているのです。

けれども、自動車会社の例で想像してみると、企業の短命化や長期雇用の消滅の可能性があるなかで、エンジニアがフリーランス的に動き出したのは、資本主義社会で圧倒されず健康的に、自分なりの専門家としての自己実現を模索した結果でもあり、個人の欲求よりも社会変化の影響が先にあったようにも見えます。個人と社会の相互作用の視点を重視して考えていく必要がありそうです。

私は医療系の教育に携わっていますが、全国的な任期制導入や教育組織改革を目の当たりにするなかで、上に述べてきた人材の流れや働き方の変化は、産業界のみではなく教育界にも起こってきていると感じています。

 

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