アルコール1  未成年者の飲酒と居場所の欠如

最近起きた川崎の事件記事で、事件前に少年がアルコールを摂取していたという部分に目がしばりつけられました。アルコール関連問題が今までにない深さで日常生活を脅かしているという危機感を感じました。

WHOの調査によると、2012年の飲酒による死亡者数は330万人、10秒に1人もが死亡しているそうです。これらを受け2014年にはアルコール消費増加傾向に警告が発せられ、国内でも、同6月にアルコール健康障害対策基本法が施行されました

小学生、中学生、高校生に対する健康教育に位置づく禁酒への取り組みが普及し、その効果かどうか、ここ数年、未成年者の飲酒は減少傾向にあります。しかし、高校生の飲酒に関する2010年全国調査の結果では、<飲酒経験のあるもの>高校男子52.3%、女子55.6%、<月1回飲酒者>男子17.9%、女子17.6%と示されており、少ないとは言えません。未成年者はアルコール分解能力が低く、アルコールの影響を受けて臓器障害を起こしたり、将来アルコール依存症になるリスクが高いため、引き続き健康問題として対応が必要です。けれども、アルコール問題は、健康問題の観点以外に、個人が飲酒に至るプロセスの、家族や社会の人間関係を含んだ複雑な構造をもっています。

アルコールは、不安の鎮静、喪失の否認、パワー願望の充足などの心理的効果を身体感覚の麻痺によってもたらします。

 日本では酒は百薬の長として、また人と人をつなぐ潤滑油として、昔から親しまれてきましたが、抱え込まれた心理的悩みや葛藤を麻痺させる現実否認への願望充足役割が飲酒理由の前面に出てくるとき、毒と化してしまうのです。

未成年者の問題飲酒は、身体感覚や心を麻痺させずとも、人とつながることができる安全な居所がなくなってきたということを現しているのでしょうか。こうした居場所の問題は、大人にも子供にも共通した悩みなのかもしれませんが。

 

参考:

健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料 (2012)厚生労働省