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幕が上がる

不思議な涙を誘う映画でした。

演劇部の部長 高橋さおりと部員たち、演劇部指導 吉岡先生、そしてさおりのお母さん。違った世代の女性たちが絡み合ってつくる物語。

わたしは、と言うと、すでにお母さん世代だからか、どの役にも同一化でき、それぞれの場面でそれぞれの体験がとってもわかり、その接点で胸がいっぱいになってしまう、そんな感じでした。きっとどの配役に気持ちが近いかで、この映画の感想は随分と違うでしょう。

物語は、あまりうだつが上がらない演劇部に、大学演劇界の女王であった吉岡先生が来たところから、さおりを中心として盛り上がりだす演劇部の、大会優勝を目指した厳しい練習と、心の触れ合いを描いています。

友達同士の団結あり嫉妬あり、憧れ信じていたのに途中で辞職し役者として飛び立ってしまう吉岡先生への憤りあり、けれども、時には少しひねながらも、それらをはばからず素直に相手に伝え合って関係をつくっていく若者の清々しさと初々しさに心を洗われました。

途中、下級生の明美がさおりに「好き」っと後ろから抱きつく場面には、どきっとしましたが、同性同士の同一化が頻繁に起こっているんですね、この年代は。こうした場面はスパイスとなって、確かわたしも女性の先輩に見とれていたことがあったわと、もう忘れてしまっていたことを思い出し、成長には同世代同士の影響が結構大きいのだと改めて思いました。

吉岡先生は、さおりたち高校生の演技魂に触発されて、諦めかけていた役者への道に戻っていってしまいます。それは、さおりたちにとっては大きな裏切りであり喪失でした。心が一つになったのに次の瞬間には、道はそれぞれに分かれていってしまうのです。しかし、それでも大会に向けた練習は続きます。

さらには、その大会の後には、さおりたち高校3年生の卒業と、それぞれの道、そして別れが待っています。

最後の大会の舞台で演じられる「銀河鉄道の夜」。人間は宇宙の果てにはたどり着けない、その不安と、いらだちと、人間が別れる辛さや不条理さを、受け入れていく、その銀河の道への切符を手にし、どこまでも行けると希望を持って向かう、舞台の「幕が上がる」。

誰の心にもある自由と自立心を、今一度確かめることができる、さわやかさが残りました。