職業3 働き方について、自らの声を聴くこと

「溢れるほどたくさんデータがあるからこそ、新しい情報化社会のなかで直観の重要性はますます増していく」ー ジョン・ネイスビッツが30年前に著書「メガトレンド」のなかで述べた言葉です。

まさにその時代が到来し、働き方について書かれている本を開いてみると、「直観的になる」、やり方よりも「内面のあり方」といった言葉が目に付くようになりました。

会社員としての挫折をきっかけにアーティストとして再出発した経歴の持ち主である、エリック・ウォールは、「UN THINKー考えない生き方」が、眠れる創造力を呼び覚ますと言います。「我思わない、ゆえに我あり」。大人の殻を脱ぎ捨て子供心を取り戻す。以前、職業1(2/17)で紹介したダニエル・ピンクも「創造的で全体的な右脳の能力を磨いた人間が新たな時代の主役となるだろう」と述べているようですが、エリックは、これからの働き方として、まず子供心からアート感覚、つまり人間の水面下の知識体系である直観を呼びさまし、同時にビジネス感覚を備えて独自に働くことを勧めています。

さて、一方で、職場側、組織問題を説く理論に、U理論という変わった名前の理論があります。開発者のマサチューセッツ工科大学 C・オットー・シャーマー博士が、U型のカーブを描くモデルの形をそのまま名づけたそうです。彼は、これまで慣れ親しんできたPDCA(Plan Do Check Action )サイクルは「過去からの学習」、それに対して、これからは「出現する未来からの学習」が必要だが、それはまず、直観として現われ、どこかに引き寄せられるような感覚、なぜ?と言うより「何?」という感覚を頼りにしていくものだと言います。何かがおかしいという感覚を頼りに、まず「観察」2番目に一歩下がって受け入れる、3番目に即興的に行動する、という順に進むプロセス学習です。2番目の受け入れる段階がモデルの「U」の底辺の部分にあたります。

両者の説く説は「内なるものに気づく」ことを重視しているという点で共通しています。けれども、そこから、個人として独立して働くのか、組織ビジョンを共有して組織人として働くのか、という最終的に働く場は全く異なっています。内なるものに十分気づくこと、そこから、何を受け入れるのかによって、その先が選択されるということになるでしょう。

仕事とどう向き合っていくのかーそれには、まず、日頃の思い込みやこだわりから自由になって、その底にある、自らの声をゆっくり聴くことが大切だと改めて思いました。

参考:

エリック・ウォール(2013)住友進訳(2014)UN THINK アンシンク 眠れる創造力を生かす、考えない働き方 講談社

中土井僚(2014) U理論入門 人と組織の問題を劇的に解決する PHP