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澪から幸へ

髙田郁さんの小説からは、江戸時代の下町人情にほっとさせられる情景が浮かんできて、それが好きであれこれ読んできましたが、最近出版された「あきない世傳金と銀」、、、今どきの社会変化に合わせてか?主人公のキャラクターが変ったなあと、そして少し前の「みをつくし料理帖」シリーズ全10巻から一つの時代が去っていったようなさみしさを感じました。

みをつくし料理帖は、澪という女の子が厳しい修行に耐え、料理人として成長していく物語で、料理人という専門職が主人公だったのですが、「あきない世傳金と銀」は、商家で女衆として奉公するなかで、番頭治兵衛に認められ、商いに心開かれていく、幸の物語。商いは詐なのか生涯をかける道なのか。昨今の格差社会に否応なく考えさせられるお金のテーマです。商道も、一つの道を見据え極める、道ですが、料理道とは異なる、テーマの現在性を感じています。

澪は、水害で親を亡くし天涯孤独となり料理屋に奉公したのですが、その生い立ちと立ち直りは、震災など日本国内に続いた天災からやはり立ち直って来られた方々への応援歌として重なりました。今度の、幸は、学者の父と兄を病で亡くし、母子生活の経済的困窮の末、呉服商に奉公することになった身の上で、さらにさらに最近の貧困家庭を思わせる設定です。

さて、世傳とは、代々にわたって伝わっていく、という意味で、小説では幸の商道とその行く末への広がりへの願いがこもっているそうです。「買う幸い、売っての幸せ」の実現目指し、逞しく歩んでいく幸に何かを投影して、私、またこのシリーズも読み進みそうですが。今の所、何かを失なった感が尾を引いています。何だろう?

みなさんぜひお読みください。