ネット上に訴える若者を救う

座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件に衝撃が走っています。一体、どんな動機があったのでしょう。白石容疑者とはどんな背景をもった人なのでしょう。遺体を冷蔵庫に保管していたなど、行動の異様さにも戦慄がはしっています。

被害者の多くがSNSを通じて容疑者とつながったという、この事件の裏に存在する若者の自殺願望を取り上げた記事1)を読んで、いっそう心が痛みました。自殺を防ぐ無料相談ネットのNPO法人OVAの代表理事精神保健福祉士の、伊藤次郎氏および、NPO法人東京自殺防止センター相談員で理事の村明子氏へのインタビュー記事でした。

自治体による自殺防止の相談窓口としては電話での対応が主流で、メールやSNSを活用している例は少ないそうです。一方、若者のコミュニケーションツールの主流はネットであるため、十分対応ができていないというのです。実際、長野県教育委員会がこの9月にLINEで中高生の悩み相談を行ったところ、2週間で547件の相談が寄せられたのですが、これは2016年の1年間で電話などで寄せられた相談件数259件の2倍以上だったそうです。伊藤氏は、ネットの世界での支援のみでは効果が少ないので、行政窓口や病院、実家などリアルな世界へとつなげていくことが重要だと述べていました。また、村氏は、電話相談へのハードルは高いが、つらい気持ちを口にすることで生きていていいんだと気づく人もいる、と述べています。

日本の若者の自殺者数は第二次世界大戦後に一つのピークがあり、それを超えることは無いのですが、現在、国内の15歳~34歳の死因の一位は自殺であり、先進国では日本だけの傾向です。2017年度版自殺対策白書では「国際的に見ても深刻」と指摘されているようです。

若者の心には、その国のあり様や将来展望や希望や絶望が反映されているように思います。閉塞感が強く行き場の無い居場所の無い社会になってきているのでしょうか。若い世代の人たちが、辛い思いを自分に向けてしまわずに、社会関係のなかで、辛さを起こしている問題について共に考えていける社会、地域作りを行っていけたらいいと思います。

 

自殺防止団体連絡先

NPO法人東京自殺防止センター http://www.befrienders-jpn.org/

                03 (5286)9090

                 (午後8時~翌朝6時、火曜のみ午後5時~)

NPO法人OVA http://ova-japan.org/ 

 

1)  朝日新聞朝刊 2017/11/05