精神障害者と抱え込む家族

 家の中に15年間監禁され、衰弱して亡くなった精神障害者の記事をみて衝撃を受けました。両親によると、16~17歳から精神疾患にかかり暴れるので監禁していた、と言います。こんなに長期間にわたってどうなっていたのか、娘の愛里さんはどのような体験をしていたのか、家族は誰にも相談しなかったのか、相談できなかったのか、と、この家族の孤独と孤立に、恐ろしくもありまた心が痛みました。

 

日本には江戸時代から座敷牢などがありましたが、1900年に精神病者監護法が制度化し、精神病者を私宅の一室で閉じ込め管理する、私宅監置といったことが起こっていました。1919年に精神病院法が交付され、不足していた精神科病院設置が道府県に命じられましたが、私宅監置が禁止されるには、1950年精神衛生法施行を待たねばなりませんでした。

精神病者監護法は世界的にも異質な制度と捉えられていますが、100年後の現代になっても、こうした事件が起こることに、驚き悔しい思いです。

愛里さんは、発見145cm、19㎏、胃のなかは空っぽだったそうです。16歳の身長としてもかなり低いほうだったかと思います。いったい家族にとって愛里さんはどのような存在だったでしょうか。娘のことは自分たちで責任を取らなくてはならないという思い、世間体や恐怖から外には漏らしてはいけないという押し込め、それから娘を嫌いになって受け入れられなくなってしまったり、そして娘の苦痛への否認もあったでしょうか。

この両親に対しての憤りと同時に、このように子どもを育てられない親が助けを求めることができる場がないのか、積極的に助けることができないのか、それが可能な社会になるには、いったいどうすればいいのか、と苦しい思いです。

 

参考記事 

長女を15年超2畳間に監禁、衰弱して凍死 | 読売新聞 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準