Each and Every Moment

吉祥寺アップリンクの上映最終日に観てきました。フランスの看護専門学校ドキュメンタリー映画で「人生、ただいま修行中」。講義、実習、学校の教官との面接、の3つのパート構成でしたが、最後の面接パートが圧巻でした。

フランスの看護教育制度は、セメスター制で3年間を6つのセメスターに分け、それぞれのセメスターに講義/演習、実習、バカンスがあるようです。

日本に比べかなり医学的技術重視で、はじめての血圧測定でコロトコフ音が聞こえなくて戸惑っているなど、日本と同じような微笑ましい演習風景はみられましたが、病院実習では、採血、抜糸、ギブスカットなど、日本の看護学生には許可されていない医療技術を徒弟的に学んでいて、学生も患者もハラハラドキドキの場面ばかり。それも、学校の教官と実習場での指導教官は全く別人で、学生は5週間にもわたる実習を実習場の指導教官から厳しく学んでいるようです。かなり強硬なカリキュラムですが、どんどん実習の体験の幅を狭めてきた日本と異なり、実践家を育てる一つの方法として再注目できるものです。

実習が終わると学生は学校に戻ってきて、学校の教官から面接を受けます。人の死に向き合った胸が痛む体験、女性患者ならいいが男性患者は苦手だと思った場面、故郷に帰りたいが頑張っている男性学生、実は看護助手と管理人もやりながらの実習で週7日間で大変な生活、空き巣に入られパソコンもとられ勉強に手がつかない現状、観ているこちらも涙が出そうな、人としての看護学生が、面接によって引き出されます。学校の教官は、一緒に涙ぐみながらも「孤独か勉強かいま何が問題?」と一定の距離で問いかけ学生を立ち上がらせます。日本だったら聴きすぎて逆にもっと依存させるのではないかと文化差を感じましたが、この学校は年齢、民族他、多様性が高い学生を抱えていたので、それらが、こうした教官のスタンスを決めていたのかもしれないと思います。

 

監督は「ぼくの好きな先生」「かつて、ノルマンディで」で知られるニコラ・フィリベール監督で、2016年に救命救急で一命をとりとめた体験がきっかけで、この映画に着手したそうです。病院実習や学生の語りの後ろに医療の抱える社会的問題もみせる映画です。

 

看護師は全ての人々に対して

耳を傾け助言し

教育および看護をする

出自や慣習 社会的な地位や

家庭環境 信仰 宗教 障がい

健康状態 年齢 性別

保険の有無にかかわらず

平等に看護を提供する

 

 

本編より